とろろ豆腐百珍

読んだ本の感想などを書きます

小澤匡行『1995年のエアマックス』

 エアマックスといえば『遊戯王』の城之内が「エアマッスルハンター」に強奪されていたアイテムというイメージしかなかった。私は1995年生まれなので、その頃の空気感のようなものが知りたくて興味を持っただけだったけれど、思わず何足も登場する名作の商品名で検索してはブックマークしたくなった。

 

 ナイキのシリーズを中心に、そのスニーカーが何を目指して開発されたのか、どこが革新的だったのかをコンパクトに説明してくれるのでスニーカー初心者でも背景のストーリーが理解しやすい。機能を視覚的に可視化したハイテクスニーカー(必然的にごちゃごちゃした見た目になる)がもてはやされた90年代、無駄をそぎ落としたシンプルでスタンダードな定番商品が求められる10年代前半、……といった風に当たり前だけどカルチャーの流行りには時代の雰囲気が出るわいなと感じる。

 

 シリーズの系譜や開発思想を追っていくような楽しみ方は、例えばガンダムのMSの歴史を追っていくようなもので、オタク文化における作品の楽しみ方とも似通ったところがある。ジャンルの歴史や知識を体系的に把握し(ディグり)、細かな違いがわかるのがかっけーとされる文化。その先にあるのは「アオ、いいよね」「いい…」で会話が成立するような世界で、シュプリームに開店と同時に集うスニーカーヘッズたちも「アオ、いいよね」「いい…」以上に多くを語らないのかもしれない。

 

 97年前後のエアマックス95ブームの火付け役が広末涼子出演のポケベルのCMだったり、木村拓哉イチローの着用が流行を後押ししてたり、当時のTVスターの影響力ってばけもんやね。