とろろ豆腐百珍

読んだ本の感想などを書きます

2018-01-01から1年間の記事一覧

名の効用

映画『レディ・バード』を見た。 ニューヨーク(都会)の生活に憧れながらサクラメント(田舎)のカトリック校に通うクリスティン(シアーシャ・ローアン)が過ごした高校最後の一年間の青春。 物語の最後、親からもらった名前に反抗してレディ・バードとい…

茶の話

たまにお〜いお茶を飲むと旅行に来た気分になるね。 自分が平生好むところのお茶は綾鷹なので、お〜いお茶を口にするのは研修や出張、合宿といった場で他人から供されたときがほとんどだ。もしくは仕出し弁当に付いてきたときなど。 そうしたものに伴う日常…

1R1分34秒

町屋良平「1R1分34秒」を読んだ。 昼休みに喫茶店で読んだのだが、この疾走感は何なのだろう。 休みを切り上げて職場に戻ってもまるで仕事をする気にならない。 そのとき手元にあったメモ帳には 「文字を追う眼球を思考の速さが追い越して毛細血管をふっ…

日記について

日記をつける。 最近は日記に関する文章を読むことが多い。 わかりやすいところでは、荒川洋治という人のエッセイ『日記をつける』。 有名無名、いろんな人の日記や日記のようなものを紹介した本。 好きなのはゲーテの「イタリア紀行」を引用したあとの一節…

イキ告の系譜 ~『三四郎』から斉藤由貴まで~

オタクは行き成り告白をする。 修学旅行で、卒業式で、成人式で、オフ会で、同窓会で。 いちど声をかけてもらっただけの同級生に、料金内のサービスをしただけの風俗嬢に、初対面のフォロワーさん(成人済)に。 好きでもない相手からの唐突なイキ告は現実世…

映画『勝手にふるえてろ』とパンクブーブーの死

昨年綿矢りさ原作『勝手にふるえてろ』映画化の報に接したとき、キャストを確認して軽く失望した。 なぜパンクブーブーがいないのか。 "ニ"がパンクブーブーではないのだ。黒猫チェルシーのボーカルなのだ。 自分は原作小説を読んだときから"ニ"を実写化する…

オーラル・ヒストリーは『ねほりんぱほりん』他に追い付けるか(大門正克『語る歴史、聞く歴史』)

話を聞くのが苦手だ。いや話すのも得意ではないが。自分の持っているエピソードのストックを放出するのは欲するところなのだが、他人の話を引きだしたりふくらませたりということをあまり欲せざるような案配なので会話が続かない。質問力、傾聴、絶無。コミ…