とろろ豆腐百珍

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二人の「ユリア…永遠に」

 北斗の拳の劇中でケンシロウは数多くの強敵(とも)と拳を交えた。最大の強敵は言うまでもなくなくラオウだが、僕が一番好きなのはケンシロウ最初の強敵シンだ。

 南斗孤鷲拳の使い手にして、殉星の男シン。ユリアへの報われぬ愛のために生きた彼の生き様は哀しく切ない。物語序盤で退場するキャラでありながらトキやレイに次ぐ人気を獲得した彼に対して、アニメのスタッフもKING軍の拡大、反乱軍相手の大立ち回り、侍女への気遣いなどのオリジナル展開を挟むことで優遇していた。

 そのアニメ第一期のエンディングテーマ、クリスタルキングの「ユリア…永遠に」(作詞、野中英俊・田中昌之)は恋人ユリアを想い荒野を往くケンシロウの心情を歌った曲だ。少なくともテレビサイズではそうとしか解釈できない。しかし、僕はこの曲はケンシロウと、そしてシン二人それぞれのユリアへの想いを表した曲だと思っている。他のサイトでも考察されているのでどこかで聞いたことがあるかもしれないが、ここにも書かせてもらおう。

 

 北斗の拳をこれから読む人にはネタバレになってしまうが、一応劇中での三人の関係を解説しておこう。(詳しく知りたければWikipediaなりに飛ぶべし)

 世界が核の炎に包まれる前ケンシロウとシンの二人は友人だった。シンは密かにユリアに恋心を抱いていたが、ユリアは親友ケンシロウの許婚、そのままならば叶うはずのない恋だった。だが、核戦争が勃発し世紀末の世が到来すると、弟ケンシロウに恨みを抱く兄ジャギはシンにむかって囁く「今は悪魔が微笑む時代だ」と。こうしてシンは暴徒を引き連れてユリアとともに旅立とうとしていたケンシロウを強襲し、ケンシロウの胸に七つの傷を付け、ユリアを強奪して去っていった。(このときユリアはシンの愛の告白に対して「あなたにそう思われていると知っただけで死にたくなります」とキツすぎる暴言を放つ。シンの想いはどこまでも報われない)シンは去り際倒れたケンシロウに向かって言い放つ「お前と俺の致命的な差、それは執念だ」と。

 その後シンはユリアにこの世のすべてを与えるために暴徒を組織して各地を略奪、自らKINGを名乗り関東一円を支配した。奴隷を働かせてユリアのためだけの都サザンクロスを作らせるが、それでもユリアの心は動くことはなかった。そんな矢先、復讐のために荒野をさまよっていたケンシロウがシンのもとにやってくる。一年前とは逆にケンシロウの前に歯が立たないシンの拳。シンの教えた執念がケンシロウを変えていた。ならばその執念の源を断つまでと、シンはユリアの胸に拳を突き入れる。しかし、それがケンシロウの逆鱗に触れ、執念を超えた怒りでケンシロウはついにシンの秘孔を突いた。

 闘いが終わり、倒れたユリアのもとに駆け寄るケンシロウ。しかしそこにあったのは愛するユリアではなく精巧に作られた人形だった。自分のために人々が苦しむのが耐えられないと、ユリアは自ら居城から身を投げたのだとシンは語る。そして彼もまた、ケンシロウの拳にかかって死ぬのを拒み、居城から燃え盛るサザンクロスに身を投げ自らの手で死を選んだ。愛するユリアの名を叫びながら。(実はこのときユリアは生きていた。ラオウの軍勢がサザンクロスに迫っていることを知ったシンはユリアを南斗五車星に預け、自らは敢えてユリア殺しの汚名を被ってケンシロウとの決戦に臨んでいた)

 すべてが終わって、シンの亡骸を葬るケンシロウは「どうしてそこまでしてやるのか」と聞かれてこう答えた。「同じ女を愛した男だから」

 

 と、ここまでの流れを頭に入れて「ユリア…永遠に」の歌詞を見てみると・・・

1.時間の中で生きてる 孤独な囁き

  手探りの中覚えた ぬくもりと淋しさ

  まぶしく輝く お前の身体抱き寄せ…今

  そうさ 愛する人には 時代(とき)は流れ

  徨う心に 明日は見えない

  エンディング(この数枚の止め絵を切り替えるだけの手抜きEDは初めて見たとき笑ってしまった)で流れた一番は、ユリアを求めて世紀末の荒野をさまようケンシロウの歌といって間違いない。ケンが荒野で行き倒れていたところから第一話がはじまるアニメ第一期にふさわしいエンディングテーマだ。

2.光の中で揺れてる お前の微笑み

  足音だけを残して 闇に消えるシルエット

  満たされはばたき 女神が背中向けて…今

  だから 今日より 明日より 愛が欲しい

  夢より愛する 君が欲しい 全てが……

  「満たされはばたき」というのは、すべてを得ながら宙に身を投げたユリアのことだろう。だから「女神が背中向け」るのだ。最初のパートは失ったユリアの面影を思い浮かべていることがわかる。「今日より明日より愛が欲しい」と叫ぶ姿は満たされぬ愛にすべてを捧げる彼の哀しい宿命を感じさせて悲痛だ。

 一番はユリアの姿を求めて荒野をさまようケンシロウの姿、二番は愛を得られぬままユリアを失い、ケンシロウがやってくるのを一人孤独に待つシンの姿を描いているのではないだろうか。

 ぜひそんな二人の姿を思い浮かべながら「ユリア…永遠に」を聴いてみていただきたい。これまでよりも一層切ないメロディが胸に沁みてくるだろう。

 

 

ユリア・・・永遠に

ユリア・・・永遠に